CSR分析 キューピー株式会社(2017)

今回は、大手食品メーカーであるキューピー株式会社のCSR報告書を分析していきます。

概要

  • 「2015年度までに2012年度対比で廃棄物排出量原単位5%の削減」を目標の1つとして掲げているが、想定通りに進行していない
  • 廃棄物排出量におけるフードロスの割合はおよそ半分を占める
  • 廃棄物の削減・再資源化に向けた様々な取り組みをしており、2016年の再資源化率は98%と非常に高い数値を誇っている

キューピーの事業内容

キューピーは1919年に創業、1925年に日本初のマヨネーズとして”キューピーマヨネーズ”を発売しました。以降、ドレッシングやパスタソースなども日本初の商品として手掛け、タマゴやサラダ・惣菜などにも事業を展開しています。また、これらの事業で培った技術力を応用し、食品だけでなく医薬品・化粧品原料といった商品も提供しています。
 
現在、キューピーグループの事業領域は下記の6つです。

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調味料やタマゴ事業に限らず、全ての事業がフードロスと関係性があります。
 
ファインケミカル事業は一見関係がなさそうですが、卵の有効成分を抽出・精製し、その機能性を食品・化粧品・医薬品に利用しています。
 
では、キューピーの事業内容について把握した上で、フードロスの現状及び改善に向けた取り組みについて見ていきます。
 

キューピーのフードロスの現状

●ここ5年間における廃棄物排出の状況

キューピーは食品メーカーということで、やはり生産工場がモノやエネルギーの中心であり、フードロスを含めた多くの廃棄物が排出されています。

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下記がキューピーグループ工場における主な廃棄物です。
・製造工程における原料の加工残さである食品残さ
・包装資材のロスとしての廃プラスチック類
・排水処理設備における排水処理汚泥
 
ここ5年間における廃棄物排出量のデータが下記になります。

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2016年度のキューピーグループ工場での廃棄物排出量は59.0千トンでした。
また生産数量1トン当たりの廃棄物量(原単位)は69.6kg/トンで前年度より1.6%減少、2012年度比では5.5%増加となりました。
 
キューピーは2012年度以降の目標の1つとして「2015年度までに2012年度対比で廃棄物排出量原単位5%の削減」を挙げていますが、想定通りに進行していないことがわかります。原因を分析したいところですが、データが限られているので不明です。
 
●廃棄物の内訳とそれぞれの削減対策
2012年より以前の廃棄物排出データも見ていきましょう。

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2010年度の廃棄量(原単位)は22.0kg/トンで、2006年度の39.6kg/トンに比べ大きく減少していることがわかります。(2011年の報告書までは、グループ生産工場ではなく食品製造工場のみのデータが記されている)

 
2011年以前の報告書では廃棄物排出量の推移だけでなく内訳のデータが載っていました。

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廃棄物の内訳データによると、フードロスに該当する「食品残さ」は廃棄物全体のおよそ半分を占めます。仮に現在も同様の割合だとすると、キューピーの2016年度におけるフードロスの排出量は27.6千トンとなります。
 
この内訳データを2006年の同データと比較し、各廃棄物の割合、廃棄量(原単位)を表にしてみました。
  2006年度 2010年度
廃棄物の種類 廃棄物の割合
(%)
廃棄物原単位
(kg/トン)
廃棄物の割合
(%)
廃棄物原単位
(kg/トン)
動植物性残さ 46.8 16.57 44.5 9.79
廃プラスチック類 11.4 4.404 12.2 2.68
排水処理汚泥 26.1 9.24 37 8.14
 
全般的に減少しており、特に食品残さの減少値が大きいことがわかります。
 
2006年の報告書では、廃棄物削減の主な取り組みとして下記が挙げられており、これらの取り組みが成果に繋がったと思われます。
動植物性残さ
・製造工程の改善や製造サイクルの見直しによるロスの低減
・乾燥による減量化
 
廃プラスチック類
・工程での副資材の使用方法見直しによる使用量削減
 
排水処理汚泥
・乾燥による肥料化
・脱水効率改善による減量化
 
ここまで色々と見てきましたが、やはり2012年度以降廃棄物の削減が進んでいない原因は確認できませんでした。
食品製造工場からグループ生産工場へとデータ範囲が広がったため、取り組みが進んでいない工場の影響が現れているのかもしれません。
 
今後のCSR報告書では、以前のように廃棄物の内訳や各工場ごとのデータが載せられることを期待したいと思います。 

キューピーのフードロスの改善に向けた取り組み

キューピーは、フードロスを含めた廃棄物の削減・再資源化に積極的に取り組んでおり、再資源化率100%(単純焼却・埋立て処分ゼロ)を目標の1つとして掲げています。
 
2016年の再資源化率は98%と非常に高い数値です。また現時点で再資源化率100%を達成している工場は、グループ生産82事業所中28事業所となっています。
 
下記が主な排出物と再資源化用途をまとめた表です。

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ここでは、廃棄物の削減・再資源化の特徴的な取り組みをご紹介します。
 
●卵の再資源化
キューピーグループでは、マヨネーズをはじめ様々なタマゴ加工品を生産しており、卵の使用量は日本で生産される卵の約10%、卵の殻は年間約2万8千トンにも及びます。
 
「キューピー マヨネーズ」の原料は卵の黄身の部分のみなので、それ以外の部分は別の形で有効活用されています。卵白はかまぼこなどの水産練り製品や製菓の原料、卵殻はカルシウム強化食品や肥料、卵殻膜は化粧品の原料など。

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●野菜の有効活用
惣菜工場では、ポテトサラダなどの生産工程で発生するポテトピール(むき皮など)を肥料化し、養豚農家に提供しています。養豚で使用する輸入肥料が高騰しており、両者にとってメリットのある取り組みです。

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●賞味期間延長によるロス削減
マヨネーズは長期保存した場合、酸素などの影響により品位が低下することがあります。キューピーグループは、賞味期限の延長するために製法や容器包装の改良をしてきました。

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●フードバンク活動の支援
キューピーグループは、フードバンク活動を行う「セカンドハーベスト・ジャパン」を2007年から支援し、マヨネーズやドレッシングなどの食品を寄贈しているそうです。寄贈品は、児童擁護施設などの福祉施設や生活困窮者に届けられます。
 

引用文献)

 

まとめ

  • 2012年度以降の目標の1つとして「2015年度までに2012年度対比で廃棄物排出量原単位5%の削減」を挙げているが、2016年度は2012年度対比で5.5%の増加となっている
  • 2010年度の廃棄物排出量におけるフードロスの割合は46.8%であり、仮に現在も同様の割合だとすると、2016年度におけるフードロスの排出量は27.6千トンとなる
  • 卵の全素材の有効活用や野菜の廃棄部分の肥料化、フードバンク活動への支援など、廃棄物の削減・再資源化に向けた様々な取り組みをしており、2016年の再資源化率は98%と非常に高い数値を誇っている 
  • 今後のCSR報告書では、以前のように廃棄物の内訳や各工場ごとのデータが載せられることを期待したい