フードロス情報の透明化が進んでいるイギリス最大の小売業Tesco

今回は、イギリスの大手小売チェーンTescoのCSR報告書を分析していきます。

概要

  • 2016/17は余剰食品量が71,178トン発生し、5,700トンがチャリティー団体への寄付、16,605トンが動物の飼料、16,391トンが嫌気性消化及びエネルギー回収源として再利用・再資源化されている
  • チャリティー団体へ寄付している食品量は2016/17が5,700トンで、2015/16の2,303トンに比べて2倍以上増加した
  • 昨年度よりも食品販売量が約10万トン増加したにもかかわらず、販売量に対する廃棄量の割合がほとんど変化していないことから、フードロス削減に向けた取り組みは順調に進んでいる

背景

今回、イギリスの企業であるTescoのCSR報告書を分析した理由は、国内外の食品関係企業のフードロス問題に対する取り組みや姿勢、その違いを読者の方に知って欲しいためです。

下記のように、欧州ではフードロス対策が盛んに行われており、市民発信の動きが政府や企業を動かすケースも見られます。本記事でご紹介するTescoも2014年に自社で発生しているフードロス情報を公表しています。

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(引用:フードロス・チャレンジ・プロジェクト

日本でも、国民1人1人ができることから取り組むと同時に、政府や企業に対する監視の目を持って、フードロス削減に向けた活動を促していく必要があるのではないでしょうか。

Tescoの事業内容

Tescoは1919年に創業、Jack Cohen(創業者)がロンドンのイーストエンドの屋台で余剰食料品を販売したことが始まりです。以来、小売業を中心に事業を展開し、イギリスで最大、世界でもトップクラスの小売企業となりました。日本で言うと、同じく大手小売チェーンのイオンと思っていただければイメージしやすいかと思います。

また小売業の他、金融、電気通信、ガソリンスタンド、通信販売といった事業も手掛けています。

Tescoの事業領域の内、フードロスに関係するのは小売業のみです。そのため、下記で取り扱っているデータは小売業に関連したものになります。

では、 Tescoの事業内容について把握した上で、フードロスの現状及び改善に向けた取り組みについて見ていきます。
 

Tescoのフードロスの現状(UKのみ)

上記で述べたように、Tescoは自社のフードロスに関する情報を明確に公表しています。 下図は、2016/17におけるTescoの食品販売量及び余剰食品量を可視化したものです。

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食品販売量の9,957,374トンに対して、余剰食品量は71,178トンであり、全体の0.71%が余剰していることがわかります。

余剰食品の再利用・再資源化

●2016/17における余剰食品の活用先
上記で発生した余剰食品は様々な形で活用されています。

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2016/17においては、余剰食品量71,178トンの内38,696トンが再利用・再資源化され、5,700トンがチャリティー団体への寄付、16,605トンが動物の飼料、16,391トンが嫌気性消化及びエネルギー回収に回されています。

”Damages”はその名の通りダメージを受けている食品や販売の対象外となった食品です。例えば、市場からリコールされた食品などが該当します。これらは再利用・再資源化の優先度が低いものとなっています。

”Not safe to donate”は人が消費する上で安全性に欠けるもので、これらは寄付や動物の飼料には活用することができません。そのため、嫌気性消化及びエネルギー回収源としての活用を促していくようです。

●チャリティー団体への寄付
上記で述べたチャリティー団体への余剰食品の寄付量は年々増加しています。

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2016/17は5,700トンで、2015/16の2,303トンに比べて2倍以上増加しました。2017/18はさらにその倍となる11,700トンを目標としています。

2016/17における食品廃棄物の内訳

Tescoは自社で発生した食品廃棄物の内訳データを公表しています。

この食品廃棄物は販売部門に限らず、生産から消費までの一連のバリューチェーンを対象としている点がTescoの素晴らしいところです。

2013/14のレポートでは、バリューチェーンのどの領域でロスが生じているかを食品の種類ごとに明示しています。例えばグレープの場合は、生産及び消費の段階に大きな原因があるようです。 

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上記を踏まえ、2016/17の食品廃棄物の内訳データを見ていきます。

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Produce(農作物)が35%、Chilled(冷凍食品)が26%と、これらが全体の半分以上を占めていることがわかります。

農作物に関しては、上記のグレープの例のように、主に生産及び消費の段階でロスが生じています。前者は生産者が悪天候などを想定し多めに作物を栽培している、後者は消費者が必要以上に食品を購入しているといった原因があるようです。

冷凍食品に関しては特に述べられていませんでしたが、一般的には下記が主な発生原因として考えられています。
・新商品などにおける販売目標と実販売量の大幅なずれ
・適期に販売できなかった季節商品
・大幅リニューアルした商品の旧版商品
(引用:http://www.jora.jp/txt/katsudo/pdf/houkokusyo/houkokusyo_I-2.pdf

昨年度のデータとの比較

最後に、2016/17と2015/16のフードロスに関するデータを比較していきます。
  2015/16 2016/17 変化量
食品販売量(トン) 9,850,324 9,957,374 +107,050
食品廃棄量(トン) 42,680 46,684 +4,004
廃棄量/販売量(%) 0.43 0.47 +0.04
寄付(トン) 2,303 5,700 +148%

昨年度よりも食品販売量が約10万トン増加したにもかかわらず、販売量に対する廃棄量の割合がほとんど変化していないことから、フードロス削減に向けた取り組みは順調に進んでいると思われます。
チャリティー団体への余剰食品の寄付量が倍増したことも大きなインパクトがあります。

このように、Tescoは自社のフードロスの現状や改善に向けた取り組みについて、詳細なデータを公表しています。特に、発生した食品廃棄物の内訳や昨年度のデータとの比較について具体的に述べている点が良かったと思います。日本の企業も参考にすべき部分が多々あるのではないでしょうか。

引用文献)

 

まとめ

  • 2016/17は余剰食品量が71,178トン発生し、5,700トンがチャリティー団体への寄付、16,605トンが動物の飼料、16,391トンが嫌気性消化及びエネルギー回収源として再利用・再資源化されている
  • チャリティー団体へ寄付している食品量は2016/17が5,700トンで、2015/16の2,303トンに比べて2倍以上増加した
  • 昨年度よりも食品販売量が約10万トン増加したにもかかわらず、販売量に対する廃棄量の割合がほとんど変化していないことから、フードロス削減に向けた取り組みは順調に進んでいる 
  • フードロス情報の透明化や表現の仕方など日本の企業が参考にすべき点が多々ある