フードロス問題について知りたい方におすすめの1冊「賞味期限のウソ」

今回は、食品ロス専門家 井出留美さんの著書「賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか」をご紹介します。 

賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか (幻冬舎新書)
 

本書では、日本のフードロスの現状や改善に向けた取り組み、食品業界の仕組み、消費者に出来ることなどについて、わかりやすく説明されています。フードロス問題について知りたい方には最初の1冊としておすすめです。

はじめに

本書は、食品ロス問題の専門家である井出留美さんによる著書です。井出さんは、長年外資系食品企業に勤められた他、青年海外協力隊としてフィリピンの食問題に取り組んだり、大学・大学院で栄養学を学ぶなど、様々な立場から食に携わってきた方です。

2011年の東日本大震災をきっかけに、被災地への支援物質運搬に携わった結果、大量の食料廃棄に憤りを覚え、以後食品ロス問題の解決に向けて取り組まれています。昨今食品ロス問題の注目度が上がっている中、全国各地での公演やメディアに多数出演されるなど同分野の第一線で活躍されています。

今回ご紹介する著書は、上記のような活動・経験を踏まえた上で、日本の食品業界や消費者に対して一石を投じる1冊となっています。

賞味期限はあくまで”目安”にすぎない

本書のタイトルにもなっている”賞味期限”と”消費期限”の意味やその違いについては、既にご存知の方も多いかもしれません。しかし、賞味期限がどのように設定されているか考えたことのある方は少ないのではないでしょうか?

賞味期限の設定方法はいくつかありますが、安全係数という数字を用いる場合と用いない場合で大きく分けることができます。

「理化学試験」「微生物試験」「官能試験」をもとに算出した実施の日持ちする日数に、1より小さい「安全係数」という数字を掛けて、賞味期限を設定します。安全係数は企業によってまちまちです。国(消費者庁)は、加工食品のガイドラインやQ&Aで0.8以上の数字を推奨しています。


本来、安全係数は食品の特性を考慮して決めるべきですが、実際は一括して決めてしまうこともあるようです(その方が楽なため)。食品の品質も原材料や栄養成分、生産・流通過程などによって、それぞれ変化してしまうため、安全係数は曖昧なものとなっています。

また、安全係数を用いない場合は、自社の経験則や勘、業界団体の定める基準等にしたがって設定しているようです。

そのため、安全係数の利用の有無に関係なく、賞味期限は必ずしも明確な基準や根拠をもとに設定されているわけではないので、あくまで”目安”にすぎないということになります。それにもかかわらず、この目安をもとに食品業界の商習慣が作られたり、発注・受注や生産管理が行われた結果、各企業は大量の食品を廃棄しているのです。

こうした食品業界の実態について、本書では詳しく説明がされています。

日本のフードロスの約半分は家庭で発生している

上記のように、あくまで目安にすぎない賞味期限を判断基準に用いていることで、企業は多くの食品を廃棄しています。しかし、実は日本のフードロスの約半分は家庭で発生しているのです。

実は、日本の食品ロス632万トンのうち、約半数(302万トン)は消費者由来、残り(330万トン)が、飲食店や食品メーカー、販売店など事業者由来です。


家庭で廃棄される主な原因は下記のようです。

家庭からロスが出る主な理由としては、野菜の皮を厚く剥き過ぎたなど、食べられる部分まで捨ててしまう「過剰除去」、保管しておいた食品の消費期限や賞味期限が接近してきてそのままゴミ箱に捨てる「直接廃棄」、食べ残し、調理し過ぎなどがあります。


ニュースやSNSでは、おせち料理恵方巻きが大量に廃棄されているなど企業側の問題が取り上げられることが多いですが、このように私たち消費者にも責任があります。

本書では、家庭のフードロスを減らすための方法がいくつも紹介されています。まずは自分たちにできることを確認し、実行してみましょう。

消費者一人一人の意思決定が将来の食のあり方を決める

本書では、日本の食品業界について下記のように述べています。

日本の食品業界は、ピラミッドにたとえれば、食品メーカーが一番下にいて、スーパーやコンビニ、百貨店などの小売店が一番上にいるという構図です。メーカーが、販売チャンスを与えてくれる人に逆らうことは難しい状況です。


また消費者の「買う」という行為について、チンパンジー研究の世界的権威であるジェーン・グドールの下記の言葉を引用しています。

ぜひ覚えておいてほしいのが、すべての食料品の購入が投票になるということだ。私たちが買うもの、つまり私たちの投じた票が、この先自分たちが進む道を決めていく。


ピラミッドの一番上にいる小売店で食品を購入するのは消費者です。 つまり、どのようなお店で、どのような食品を購入するのか、その一人一人の判断が小売店、食品メーカー、ひいては食品業界全体に影響を与えることになります。

例えば、下記のようなことがあります。

「個人商店がどんどんなくなっていく」という嘆きはよく聞きます。でも、私たち自身が、八百屋や魚屋で買い物することを選ばなかったから、廃れていったのです。 

これは僕自身もあまり意識していなかった部分で、ハッとさせられました。普段何気なくコンビニやスーパーを利用していましたが、その行為が積み重なって現在の状態を作り出したということですね。

やはり便利なので、今後もコンビニやスーパーは利用し続けますが、購入する商品についてはもっと意識しようと思いました。フードロスという観点で言えば、形の悪い野菜や果物、賞味期限の近い商品を購入することなどが挙げられます。

みなさんも、普段どのような理由で「買う」という行為をしているのか、ぜひ考えてみてください。

食との触れ方について考えさせられる1冊

本書では、上記の他にも、食べられる物か判断する方法やフードロス改善に向けた取り組みなど、様々なことが述べられています。

日常的に行っている”買う””作る””食べる”という行為に関して、改めて考えさせられる1冊となっていますので、ぜひ実際に手にとって読んでみてください。